🎯 目標管理とは
目標管理とは
目標管理とは、目標を設定し、定期的に達成度を確認しながら、目標達成を実現していくマネジメント手法です。
目標管理が人事評価と強く結びついて保守的な目標になったり、目標を振り返らず形式的になって、上手く目標管理がワークしていないことがよくあります。しかし、目標管理の目的を理解し適切に運用することで、メンバーのやる気や主体性を促し成長や成果を高めていけます。
⚠️ここでの「目標管理」は、EMのピープルマネジメントにおける個人の目標管理について説明しています。組織やチームの目標管理などについては当てはまらない内容もあります。
目標管理の目的
一般的な目標管理の目的は次のとおりです。
- 組織全体の方向性を揃えて、効率的に組織の目標達成を目指す
- 目標は「会社の目標 → 事業の目標 → チームの目標 → 個人の目標」というように繋がっています。
- 組織から個人まで方向性を揃えることで、効率的に目標達成を目指せます。
- そのため、個人目標では、チームの目標と個人のWill/Canを加味して、期待値をすり合わせながら目標を立てていきます。
- そうすることで、個人目標の達成が「メンバーの自己実現」と「組織目標の達成」の両方の実現につながります。
- メンバーの主体性やモチベーションを高め、能力を最大限に発揮させる
- 個人目標は、メンバー自身の目標なので、メンバーが主体となって目標を立てていきます。
- 目標の自己管理を促すことで、個人目標を自分事として取り組むことができます。
- そして、目標に対する責任感が高まり能力が発揮され、その結果として成長や成果も向上します。
- 成果や成長を客観的に評価して個人の頑張りに報いる
- 「どういう成果をだしたか」、「どんなスキルを身につけたか」を評価して、フィードバックすることで、メンバーの頑張りを認めていきます。
- また、頑張りを認めるだけでなく、昇給や給与、やりがいのある機会の提供などで報いていきます。
- そして、現状の課題や今後の伸びしろを話し合うことで、メンバーのやりたいことやなりたい姿へ近づくモチベーションを高めていきます。
🔄目標管理のサイクル
全体的な、目標管理のサイクルは次のとおりです。
- 期初:目標を設定する
- 期中:随時目標の達成を支援をする
- 期中:定期的に目標を振り返る
- 期末:目標の達成度を評価する
①期初に目標を設定する
まずは、期初に目標を設定します。目標設定は、メンバー自身が主体的に進めていきます。目標設定を主体的に考えることで、メンバー自身が目標や実現方法に対する理解を深め、前向きに達成に取り組めるようになります。
1. マネージャーから事前にチーム目標や期待値を伝えておく
組織目標から個人目標までつながりを意識して、個人目標を立てる必要があります。そのため、マネージャーから事前にチーム目標や個人に対する期待値を伝えておきます。こうすることで、メンバーがどうやってチームに貢献して成果を上げるか考えられるようにします。
- チーム活動を通して、チームに向けてプロダクト戦略やチーム目標を伝え続ける
- 1on1や目標設定の対話を通して、メンバーに期待する能力や言動、成果を明確に伝える
2. メンバーに個人目標を立ててもらう
次に、メンバーに個人目標を立ててもらいます。目標を上手く立てれなくても今できる範囲で実施してもらいます。目標がうまく立てれないということは、「期待値が上手く伝わっていない」、「現状把握がうまくできてない」、「自分がチームにどう貢献すれば良いかわからない」などの状況の裏返しでもあるので、そこは目標設定を通してフォローしていくと良いでしょう。
また、目標を立てるだけでなく、目標の実現に向けたアクションプランも言語化してもらいます。アクションプランを考えることで、本当に目標を実現できるかどうかを検証できるようになります。
3. 個人目標について話し合う
メンバーから個人目標について共有してもらい、組織と個人の期待値を擦り合わせていきます。理想的には、組織も個人もお互いにWin-Winになる状態を目指していきます。
- チームメンバーとして、個人目標がチーム目標の達成につながるようにする
- 個人としても、自己実現のために新しい挑戦やスキル成長に繋がるようにする
- 個人のやりたいことや強みが活かせるような目標やアクションプランにする
- メンバー自身がやりたいと思えるような目標にする
②期中は随時目標の達成を支援をする
個人目標の管理は、自己管理が求められます。EMはサポート役と振る舞うことで目標の達成を支援します。
自己管理のレベルやスキル感などに応じて支援の度合いも変わります。例えば、そもそもアクションプランを上手く描ききれていない場合は壁打ちして思考の整理を手伝ったりやり方自体を教えたりします。
支援する方法としては、次のような方法があります。
- 業務を通じて支援する
- 機会を作る、議論する、レビューする、一緒に手を動かすなどで業務を通じて目標達成を支援します。
- 1on1を通じて支援をする
- 仕組みで支援していく
③期中は定期的に目標を振り返る
定期的に毎月1回ほど目標の振り返りをしていくことを推奨します。振り返りの中で、達成度をすり合わせ、学びを言語化し、フィードバックをし、必要なら軌道修正をすることで、目標の実現に向けて前向きに取り組んでいくことができるようになります。
- 現在の達成度を認識合わせする
- まずは、達成度に対して認識を合わせることで振り返りの対話を始めていけます。 -「達成度はどのぐらいか?」、「残りはどのぐらいか?」、「ペースとしては早いのか遅いのか?」を話し合います
- 数値で測定可能な目標であれば分かりやすいですが、数値で測定できない目標であればすり合わせは丁寧に実施します
- 学びを言語化して次に活かす
- 目標を目指して仕事をするとさまざまな発見や学びがあります。それを言語化してもらうことで、次に活きるようにします。
- 「上手くいったことはどんなことでしたか?」「うまくいかなかったいかなかったことは?」「目標達成に活かせる学びはどのようなものがあったか?」などを質問していきます。
- 目標達成に向けた方針やアクションを設定する
- メンバー自身に目標達成の方法を考えてもらいます。また必要であれば、EMから方法を教えたり議論をします。
- 「目標達成に向けて何をしていきますか?」、「それはいつまでに実施しますか?」、「上手くできたかどうかどうやって評価しますか?」
また、振り返りの際は、フィードバックで学びを促したり、承認をすることでエンゲージメントも高めていくこともとても大事です。
④期末に目標の達成度を評価する
評価はメンバーにとってとても重要な関心事です。評価結果が給与に影響するのはもちろんありますがが、頑張って働いたのに誰も見てくれてなくコメントがないでは寂しいものです。また、働いても報われない、成長にも繋がらないと考えて離職リスクが高 まってしまうでしょう。そのため、しっかりと目標の達成度について評価をして、承認やフィードバックをし、次の目標に活かしていきます。
- 自己評価をしてもらう
- 目標を設定したメンバー自身に自己評価とその理由を言語化してもらいます。
- 上手く行った点、上手く行かなかった点、チームとして改善すべき点などを記載してもらいます。
- EMとメンバーで達成度について認識を合わせる
- 定期的に達成度をすり合わせているので、期末時点でお互いに達成度の認識が大きくずれることはないはずです。
- お互いに納得感が高い評価に繋がり、次の目標や課題について前向きに取り組めるようになります。
- また、達成した目標の成功要因、未達成の目標の障害を振り返り、学びに活かしていきます。
詳細については、「評価」の記事で記載していく予定です。
☝️目標を立てる時のポイント
参考までに、目標を立てるときのポイントをいくつか列挙します。目標の運用はしっかりやっているが目標管理が上手くいかない時は、大体目標設定でうまくいっていないのが原因です。目標が上手く立てれるかチェックしてみてください。
- 重要な部分に焦点を当ているか?
- 目標は客観的に判断が可能か?
- 目標達成の道筋が6-7割は見えているか?
- 個人のやりたいことや強みが活かせるか?
- 目標達成したら個人の成長が実現できるか?
- メンバーが目標を達成したいと考えているか?
重要な部分に焦点を当ているか?
枝葉をやっても成果はでません。「目標の数が多すぎる」、「目標がタスクリストになっている」といった状況の場合は黄色信号です。
やりたいことは常にリソース以上にあるので、その中で優先度をつけて、何をやって何をやらないかを決める必要があります。その時に、プロダクト戦略やチーム目標の達成において、本質的な部分に焦点を当てたものにします。
また焦点を当てるには、課題の解像度を高め、問題設定をする力がとても大事です。ドメイン知識や技術的なスキルを高めたり、ロジカルシンキング・クリティカルシンキング・システム思考などを学ぶと良いでしょう。
目標は客観的に判断が可能か?
よく目標を振り返るときに、目標が主観的すぎて達成度合いが分からないことがあります。
客観的な判断が可能な目標をたてるには、OKRのような形で目標をたてると方向性と主要な判断軸が決まるのでオススメです。また、エンジニアリングの場合は必ずしも定量化できないこともあるりますが問題ありません。
目標の例です。
- O
- 使い勝手と安定性が良いXの体験を提供することで事業拡大に貢献する
- KR
- N月までにX機能をリリースする
- 可用性を99.5%以上を保つ
- サイト全体の95%タイルのレスポンスタイムを200ms以下にする
目標達成の道筋が最低6-7割は見えているか?
目標を達成するには、達成の道筋をアクションプランという形で大まかに考えておく必要があります。アクションプランを考えることで、目標の達成が現実的なものなのかどうかを判断することができます。
個人のやりたいことや強みが活かせるか?
個人のやりたいことで強みが活かせると、成果はとてもでやすくなります。なぜなら、やりたいことなので主体的にモチベーション高く取り組み、強みが活かせるので上手くいきやすいので、成果がでます。
ドラッガーも「人は強みによって成果を上げる。弱みで優れた成果を上げることはない。」と言われるように、強みを活かした目標設定はかなり大事になってきます。弱みで戦っても成果が出るまでなかなか時間がかかるの、かつ、成果も非凡なものになってしまうでしょう。
目標達成したら個人の成長が実現できるか?
「コンフォートゾーン(現状維持で成長が見込めない)」、「チャレンジゾーン(やりがいがあり挑戦的なので成長が見込める)」、「パニックゾーン(想像が全くつかなく心身が疲弊する)」と3つのゾーンがあります。
全ての目標ではなくてもいいので、チャレンジゾーンの目標もいくつか立てるることで、個人の能力を向上させることができます。もし、目標に届かなかったとしても大きく成長しますし、目標に届いた場合は成長だけでなく大きな成果も実現できます。
チャンレンジゾーンの目標を立ててもらうには、失敗を許容して、挑戦を推奨するような文化作りが必要です。また、人事評価と目標管理が直接的に結びついてしまうと、保守的な目標を立てるインセンティブが働いてしまって上手くいかないでしょう。
メンバーが目標を達成したいと考えているか?
メンバー自身がモチベーション高く主体性を発揮して目標達成を目指すには、自分で目標を設定し、それを達成したいと思えているのがとても大切です。評価のための形だけの目標か、本当に達成したい目標か見極めていきます。