全体像を見失わずにプロダクトを開発し続けるユーザーストーリーマッピング

アジャイル開発では、機能をストーリーという形でタスク分解することで短期間で動くソフトウェアを作り続けることができます。

しかし、チームや開発規模が大きくなってくると、タスク分解したことで全体像が見えづらくなり

  • 「自分たちがどこに向かっているのかわからない」
  • 「なぜこの優先順位かわからない」
  • 「どこまで進んだかわからない」

といったような問題が発生しがちです。

それを解決する方法の1つとして、ユーザーストーリーマッピングがあります。

ユーザーストーリーマッピングは、プロダクト開発の過程でユーザーの視点からストーリーを描き出す手法です。図、ストーリー、議論を通して関係者が全体像の共通理解を得ることができます。そして、共通理解をベースにしアウトカムを最大化していけます。

この記事では、ユーザーストーリーマッピングとは何か、どんな課題が解決できるのか、簡易な作成方法について解説していきます。

ユーザーストーリーマッピングとは

ユーザーストーリーマッピングは、ユーザーの視点からユーザーのタスクを可視化して、プロダクト開発の関係者が共通理解を得るためのテクニックです。

アジャイル開発では、チームが毎週動くソフトウェアを作り続け、市場や顧客にソフトウェアを提供します。しかし、しばしば「全体像がわからない」、「なぜこの優先順位かわからない」、「どこまで進んだのかわからない」といったような問題が発生します。

問題の主な理由としては、アジャイルでは短期間で動くソフトウェアを作るために、ストーリーを細かくし、開発しやすいようにタスクを細分化していきます。細分化により動くものを継続的に提供することができるようになる一方で、ビジネスやユーザーにとって当初目指していた目的が何であったかを見えづらくしてしまいます。

ユーザーストーリーマッピングでは、ストーリーの山を作ったときに、とかく見失われがちな全体像を提供するためのテクニックです。全体像を示すことができれば、関係者と効果的なコミュニケーションがとれ、首尾一貫したユーザー体験を実現するための方向性を築くことができます。また、ユーザーストーリーマッピングは、製品ビジョンをバックログに変換し、自分たちが何を開発するつもりなのか、誰のためになぜ開発するのかを理解するための方法にもなり得ます。

ユーザーストーリーマッピングのメリット

アウトプットではなくアウトカムに集中できる

引用元:「ユーザーストーリーマッピング

ストーリーマップを作ると、ユーザーとユーザー体験に意識を集中できるようになります。よりよい会話を交わすことができるようになり、最終的にユーザーのアウトカム(ニーズや不満や不安を解消)を実現できるプロダクトを作ることができます。

ストーリー単体でみていると、ユーザーやユーザー体験に意識がいきづらく、アウトカムではなくアウトプット(ストーリーを作ること、リリースすること)に注力してしまいビルドトラップにハマってしまいます。

首尾一貫したユーザー体験を構築できる

引用元:「ユーザーストーリーマッピング

ストーリーマップを作ることで、ユーザー体験を一気通貫で考えることができます。一気通貫でユーザー体験をみることで、体験上抜けている部分やボトルネックになっている部分を見つけやすくなり、ユーザー体験全体を見てユーザーへの価値提供を高めていくことができます。

機能開発の優先度がつけやすくなる

引用元:「ユーザーストーリーマッピング

ストーリーマップを作ることで、開発すべきストーリーに対して開発リソースが圧倒的に足りないということがわかります。このとき、事業戦略やプロダクト戦略などから特定のアウトカムに焦点を絞り優先順位をつけて開発すべきストーリーを選んでいくことで、特定の成果を少ない開発リソースで実現していくことができます。このように、ストーリーマップを使うことで、アウトカムに注力しながら、MVPやリリース計画をつくれます。

誰がユーザーストーリーマッピングを利用すべきか

関係チームやステークホルダーが多くなってきた場合は、ユーザーストーリーマッピングは有効です。

特に、IT企業のプロダクトオーナー、プロダクトマネージャー、UX担当者などが、製品の全体像やUXの方向性を明確にするために使ったり、社内のステークホルダーや開発者とのコミュニケーションを強化するために使えます。

ユーザーストーリーマッピングの作成方法

ユーザーストーリーマッピングの大まかな作り方は次のとおりです。プロダクトのステージや規模によって粒度は適宜考えていく必要があります。

  1. イデアの枠組みを作成:ビジネスの目標や顧客のニーズを明確にします。
  2. ユーザーのストーリーを描写:ユーザーが製品を使用する際のストーリーを描写します。
  3. 詳細部分と代替案を探索:大きなストーリーをさらに細分化し、具体的なタスクや機能を明確にします。
  4. スライスを作成:製品の開発を段階的に進めるためのスライスを作成します。

ユーザーストーリーマッピングについてもっと学びたい方は

ユーザーストーリーマッピングは、ユーザーの視点から製品のストーリーを描き出すことで、製品開発の方向性を明確にし、チーム内のコミュニケーションを強化する手法です。この手法を活用することで、ユーザー中心の製品開発が可能となり、より良い製品を生み出すことができます。

より詳しく学びたくなった場合は、ぜひオライリーの「ユーザーストーリーマッピング」を読んでみてください。ユーザーストーリーマッピングの使い方だけでなく、アジャイル開発でどのように使うか、アウトカムに焦点を向けていくかといったことも書かれており示唆深い内容になっています。